わたしの出会った子どもたち 灰谷 健次郎

わたしの出会った子どもたち (角川文庫)

わたしの出会った子どもたち (角川文庫)

あまりにも心を打った一冊。
この先 この本は何度も読み返すかもしれない。

タイトル通り灰谷さんが出会った子供たちを通して
灰谷さんが自己を飾りなく見つめていく記録。
大人として、ついついしてしまいがちなことを
甘えず真摯に受け止めていく姿。

この本の中に「ドクサ」という言葉が出てくる。
「ドクサ」というのは、まやかしであり世間体でもあり・・・
うまく説明できないので、灰谷さんの言葉をそのまま借りたい。

「例えば美について言えば、本当にそれが美しいかどうかも吟味しないで、
世間で美しいとしているからそれを美しいと考えているとか、
あるいは何となく自分にそれが美しいように思われるからそれを美しいとしているのでは
美しいと「知った」ことにはならない。
それではまだ知識を欠き、ドクサに支配されているのです」

灰谷さんのこの本には 自分が何を求めているのか。がテーマでもある。
自分が本当に何を求めているかをわからずに、このドクサに支配されて
必死で手に入れたものは、それはやはり真の物ではないので
決して満足できないだろう。という文がありました。

世間でこういうものが幸せだと言われている。
それにガンジガラメになっている自分を思いました。
もちろん、それが本当に私が求めているものである可能性もあるけれど。
それがドクサであることをしっかり疑ったことがあったかな。と

日々は忙しいし、情報は多量に入ってくるし、
何だかどんどん鈍くなってきていることを感じるこの頃。
私は本当は何を得ることが「幸せ」だと思っているのだろう。
その手段にこだわりすぎていないかな。
そんなことを思いました。

灰谷さんも、まだ「本当に求めているもの」はわからないそうです。
だから、考えすぎるのも何なんだと思うけれど。
忘れられない言葉となりました。