キッドナップツアー 角田光代
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/06/28
- メディア: 文庫
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父が娘を誘拐する一夏の旅行
「児童書」という表現がピッタリ。
どう接していいかわからなかった「帰ってこない父」「情けない父」
旅が進むに連れて、娘は父への愛情を確認していく。
私が好きだったのは、小道具的に出てきた叔母「ゆうこちゃん」の話
ゆうこちゃんは、主人公ハルに「実は昔あんたのお母さんもあんたのおばあちゃんも
大嫌いだったんだよねー。」と告白する。
ゆうこちゃんは、ハルの「祖母と母」が2人いつも仲良くてべったりで
疎外感を感じていたという話をする。
ハルは常々、家族というのはどうして自分で選べないんだろう。他の大事なものは
何だって自分で選べるのに。と思っていたので耳を傾ける。
今はもう嫌いじゃないの?と尋ねるハルに、ゆうこちゃんは、嫌いじゃない。
他にすごく好きな人ができたから。と返答する。
何それ?と意味がわからず尋ねるハルに、ゆうこちゃんが言ったセリフ
「ほかのすごく大事なことを選べるようになると
選べなかったことなんかどうでもよくなっちゃうの。
嫌いなら忘れちゃってもいいんだし、好きなら一緒にいてもいいんだし。
それくらいどうでもよくなった考えてみると、それほど嫌いでもないってことがわかったから」
多くの事柄には「母娘」の間柄が関係してくる。と私は思う。
母親の愛情不足を訴える人は多いし、まさに私もその1人だと思う。
母親にとって子供は唯一無二の存在。何があっても何よりもナンバーワンでないといけない。という思い。(そしてそれは間違いじゃない)
そして問題は「愛情」イコール「理解」と直結してることにもある。
「理解されていない」は「愛されていない」に結びつくのだ。
しかしながら、私はこの「他にすごく好きな人ができたから」という
ゆうこちゃんの理由に深く共鳴する。
私は結婚してからも、母にとってのナンバーワンであろうとし続けた。
しかし、結婚7年目をむかえようかという今になって、そんなことは
本当にどうでもよくなってきた。
他の誰かのナンバーワンになれたから。という理由では少し説明しきれない。
「愛情」というものがどういうものかわかってきたから。という感じ。
思っていたよりも、人の愛というのは「完璧」ではないのだということ。
そしてそれはそこに「絶対」としてあるのだということ。
「愛するべき」とか「愛されるべき」とか考える隙もなく、それは存在する。
そういうことに薄々気づきだすと、
母が私よりも母を大事にする姿、父を優先する姿に、何も感じなくなってきた。
そうだろうよ。とも思う。
ウサギじゃないけれど、旦那への愛、自分への愛は、かまってやらないと死んでしまうのだ。
そっちに必死になるのは当然のことだろう。
でも、親と子は違う。
そういう関係に私はようやく胡座をかいてゆったりと座るようになった。
それはとても心地良い。