南の島のティオ

南の島のティオ (文春文庫)

南の島のティオ (文春文庫)

受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、
花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、
つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、
かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。第41回小学館文学賞受賞。

読んだ後に心温かくなるような一冊でした。
どことなく不思議な話しが続く短編集。

主人公のティオという少年がすごく良い。
妙に大人びたところはないんだけれど、
言うセリフだとか、物の受け止め方が真っ直ぐでステキ

印象に残ったのは「透けて見える大きな身体」に出てくるセリフ。

ティオの友達のアコちゃんは、かわいいからという理由で
天に召されようとしている。
天で暮らすほうが絶対幸福だ。と言い放つ天の者に
ティオは、地上で暮らす方が幸せな理由を説明しなければならない。

「天で生まれたのが天の者だ」ぼくは言った。
「アコちゃんは人の子として地上に生まれた。
人の子の幸福と不幸を身に受けるように生まれた。
それなのに、天に連れていってしまうのはいけないことだ」

ステキなセリフだなぁと思った。
そうだった、私達は人の子として、幸福と不幸を身に受け入れるように
生まれたんだったね。

なんだか、不幸だ、不幸だと嘆いている日常だけれど
あたりまえじゃない。と思えるような気持ちになった。