「エンジェル・エンジェル・エンジェル」 梨木香歩

エンジェル エンジェル エンジェル (新潮文庫)

エンジェル エンジェル エンジェル (新潮文庫)

絶賛します。(笑)  
正直 梨木さんの「西の魔女が死んだ」はあまり面白いと思えなかったので、それ以来 梨木さん作品を読んでいなかったんだけれど これは素敵。
川上弘美ファンや獄本野ばらファンなら好きかも。

不安定な気持ちを持つ私と夜中に覚醒する私のおばぁちゃん。
少し昔の時代、初めて抱くイジワルな感情や嫉妬を持て余すさわこ。
二つの物語が交互に出てきて結ばれていきます。
本評に「からくり小説」とあるように、あっこれはあの時の・・、あれはサインだったのか・・等と遊びの部分のすごく楽しめます。
ラストは泣けます。
とても素敵な感じで、主人公を読んでいる人を救ってくれます。
他人の言葉が、その人にそんなつもりはなくても、相手を思った言葉でなくても、人を救うことがあるのだなぁという。人が人を救える素敵な話し。

とても好きな部分を抜粋。

「ずっと後になって、私は、本心、というものが、それを言った当初はそう思えなくても、実はだんだんにそれに近づいていくこともあるのだと思った。むしろ、そのときにはわからなかった本心がひょこっと顔を出す、ということがあるのかもしれない。それを考えると、時間というものは不思議だと思う。
その時点ではわからずにいた言動が、あとになって全体を振り返ってみると、あらかじめ見事にコーディネイトされた一つのテーマに統一されているようにも見えるのだ」

思い出せば恥ずかしくなるような言動もやはりあの時にはあれが必要だったのだ・・と思う時が私にもある。
自分が年を老いて人生を振り返ったりなんかすると、何か 一つテーマが見えてくるのかもしれない。
自分のしたことだから まとまりが出てくるのかも。